【秋葉原、神田岩本町】路上で将棋をしていたオヤジが、通行人をかつあげ

随想
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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直立不動で将棋盤の前に立つオヤジが私を呼び止めた(イラスト:モクソン ホウ)

直立不動で将棋盤の前に立つオヤジが私を呼び止めた(イラスト:モクソン ホウ)

神田岩本町に用事があり、秋葉原駅を出て、一人で歩いていたときのことです。神田川に架かる橋の歩道で、初老のオッサンたちが将棋をしていました。

神田川に架かる橋のイメージ

神田川に架かる橋のイメージ

オッサンの前にテーブルがあり、将棋盤が置いてあります。水色のダサいブレザーを着たオヤジ、それに向かい合うオヤジ、脇にも冴えないオッサン。

盤面の上側に立つ水色のオッサンが、私を呼び止めた。「ちょっと、そこの君。碁盤の上にあるこの駒を、ここに移動させなさい」と言って指さす。私は立ち止まった。良く分からぬまま、オッサンが指さす駒を前方へ動かしました。すると、水色オヤジは、別の駒を動かした。そして、しれっとぬかした。

「王手。はい、あんたの負け。はい、500円」

私の鼻っ面に、水色オッサンは、手のひらを差し出した。金を出せという意味らしい。突然のことに、私はわけもわからず、そのようなルールなら仕方がないと思い、財布を探して、カバンのなかをまさぐった。私の素直な様子を見て、水色のオッサンは「しめた、こいつはバカだ」と思ったに違いない。表情変えずに続けてこう言った。

「2000円払いなさい」

500円から、急に2000円となった。ようやく、私は騙されていることに気がついた。私は「なんで、てめいらに金を払わねばならぬのだ!」と奇声を上げた。すると、水色おやじの周囲にいたオヤジも騒ぎ出した。ここにいたって、こいつらがグルだと気づいた。

オヤジどもは、私の両脇をつかんで、羽交い締めにした。私も負けじと、よく分からないことを大声で叫んだ。中年オヤジ(私)の悲鳴が、神田岩本町中に響き渡る。水色おやじたちが、一瞬ひるんだすきに、振り切った。「おまわりさーん、けーさつはどこー」などとと奇声は発しながら、後ろを振り返らず、逃げ切ったのでした。

君子危うきに近寄らず

君子危うきに近寄らず

このように街中を歩いていると、ときたま、路上で将棋をしている人を見かける。

この間も、新橋で見た。一緒にいた妻が、あれなんだろーなんて言いながら、将棋をしている人に近づいてゆく。あぶないあぶない。すべての人が、こんなんではないでしょうが。路上で将棋をしている人をみかけると、遠回りをして近づかない。その説明を、妻にせねばならぬのだが、つまりこういうこと。

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