【佐藤雅子個展レビュー】絵を面白くさせる技法を読み解く

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

木村 邦彦をフォローする
絵画は静止画だけど、映画のように雄弁

絵画は静止画だけど、映画のように雄弁

かつて、美術評論家の坂崎乙郞は「一枚の絵を見るには、椅子が必要だ」と言った [1]。映画を観るように、絵にも読む解くドラマがある。表面のボコボコとしたもの、焼け焦げた痕跡。絵肌からは、作品が完成するまでの道のりも読める。

銀座のGallery G2で観た美術家・佐藤雅子さんの絵画にも、読み解く面白さが詰まっていた。ほとんどの作品に買い手がつく人気ぶりでした。

アクリル絵の具に施した混ぜ物は、酸化鉄。これは、なんと「使い捨てカイロ」から取り出したという。絵肌はどことなく、錆びた鉄造形めいた風格がある。野心的なアイデアは、師匠の故狩野炎立氏の「人とは違うことで挑戦しなさい」という教えがもとにある。

絵肌には、絵が完成するまでの年輪が刻まれている

絵肌には、絵が完成するまでの年輪が刻まれている

焦げ茶色は、ガスバーナーで焼きつける。焦げた部分には、絵を支える木製パネルが覗く。火花散る人生の輝き、またはその歴史を感じるようです。

白い絵肌に残る、激しく焼け焦げた跡

白い絵肌に残る、激しく焼け焦げた跡

よく見ると、焼け落ちている。焼け落ちた向こう側を想像してみる。観る者の脳裏に新たなドラマが映る。

絵の向こう側を覗きたくなる

絵の向こう側を覗きたくなる

酸化鉄、バナー。そして、唐突に表れる漆黒の直線。佐藤雅子さんの作品は、アイデアと遊び心で溢れている。

絵画的にもデザイン的にも、この直線の有無で、印象が変わる。神秘的な緊張感を生む。宇宙に現れたモノリスのようです。

宇宙空間に現れたモノリスのよう

宇宙空間に現れたモノリスのよう

下の作品は、ローラーを用いた水彩画。ここにも、漆黒の直線が登場する。

画材が違ってもアイデアは活きる

画材が違ってもアイデアは活きる

美術家・佐藤雅子さんは陶芸家でもあるのですが、ここでは絵画作品を中心にご紹介しました。ハンディタイプのガスバーナーを使った技は、とても興味深く、私もやってみたいと思った。近々、このブログでも焦げ目のついたイラストが登場するかもしれません(笑)

佐藤雅子個展
会期:2016年5月26日から31日
時間:11:00〜18:00
場所:銀座 Gallery G2

PR


【脚注】

  1. 『絵とは何か 』(河出文庫), 坂崎乙郎 著, 1983年,p46
タイトルとURLをコピーしました