漏れっぱなしの人生 接して漏らさず……貝原益軒のスローライフ

人生(LIFE)
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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 速さは、確かに仕事の効率などに関わる美徳です。しかし、人とのコミュニケーションには、スローの技術が必要なこともあります。たとえば、パートナーとの性的なスキンシップは、その一つです。

 

使えるエネルギーは限られている

 人間の肉体は歳とともに「遅く」なってゆきます。ありのままの、年齢に相応した肌の触れあい方を見つける必要があるのかもしれません。江戸時代の本草学者で医者でもあった貝原益軒は、長生きの秘訣として、「わかき時より、色欲をつつしみ、精気を惜しむべし」と言っています。人生のなかで使えるエネルギーは限りがあるというのです。

 大切な人と、大切な仕事、大切な時間を過ごすためにエネルギーを使いなさいと説いています。知恵を重ね、年齢を重ね、健康に長生きすることは喜ばしいことかもしれません。

普段は省エネで必要な時に使う!

 貝原益軒は、性の交わりについて回数と目安を、具体的に提案しています。

  • 人は年二十の者は四日に一回もらす
  • 三十の者は八日に一回もらす
  • 四十の者は十六日に一回もらす
  • 五十の者は二十日に一回もら
  • 六十の者は精をとじてもらさない

 心を静かにして、精力剤などで一時的な勢いに頼らないだなんて!六十歳を過ぎると、まるで妖精のようです。自然にしたがい、“慎め”なくなったときが、交わりの合図なのかもしれませんね。

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アトミックな交わりへさようなら

 “もらす”とは、射精と言葉を置き換えることができそうです。「漏らす」だけが、人生ではありません。大切なことは、道筋。効率と品質のバランス……なのです。

 限られたエネルギーを無駄に消費せず、大切な時に使いものです。歯止めが効かない性欲ではなく、風力とか地熱、太陽熱のようなナチュラルな交わりが、時代が求める生き方のように。

 歳を重ねるごとにマスターするべき大人の慎みかもしれません。伴侶や恋人が、精力剤に頼りがちで、やっつけ仕事のような性の交わりをするようになったなら……。『養生訓』を読んでみてはいかがでしょうか。

【参考】

  • 『養生訓・和俗童子訓』貝原益軒(1961)
  • 『養生訓に学ぶ』立川昭二 (2001)
  • 『すらすら読める養生訓』立川昭二(2005)

 

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