エリック・カールの『はらぺこあおむし』は愛され、本物のシャクトリムシは嫌われる

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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エリック・カールの絵本『はらぺこあおむし』のページをめくるたび、この「あおむし」はシャクトリムシに違いないと思う。理由は、お腹の部分に足がないからです。

ところで、幼いころ、シャクトリムシが大好きでした。小学生時代の級友たちもこのキュートな生き物の大ファンで、当然、大人たちも大好きに違いないと思っていました。

小学校の近くに、シャクトリムシたちがいる木がありました。そこは子どもたちの間で語り継がれる秘密の場所です。学校の帰り道に、級友がこっそり、この聖地を教えてくれた。草木が生い茂る野っ原にあったのは、一本の低木です。

なるほど、その低木には、体をおりまげて進む小さなシャクトリムシたちがいた。私は、シャクトリムシの面白い動きに感動し、そして、子どもらしい次の思いにとらわれた。このキュートな生き物を、母にプレゼントしたい、と。

シャクトリムシをつけた小枝を持って、家に帰りました。母のろうばいは推して知るべしです。

母はシャクトリムシを見ると、喜ぶどころか、悲鳴を上げて腰を抜かしました。いますぐ、元いた場所に戻すようにと言います。私は、捕らえた獲物を飼い主に見せて叱られたネコのようにシュンとしました。

大人となったいまでは、もちろん母の気持ちを理解できます。なお、虫採り少年の経験は大人になっても活かされ、部屋に侵入した虫退治は私の役目になっています。

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