【バイラルメディアのライター】この職種にチャレンジするのはオススメ?

人生(LIFE)
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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【バイラルメディアのライター】この職種をオススメしない、いくつかの理由

むかしはバイラルメディア(キュレーションメディア)が大好きで、サイト運営にかかわったり、ライターとして記事を書いていたこともありました。しかし、情報の信用こそが大切だと気づき、いまでは一般紙や業界紙などの昔ながらの新聞メディアに親しんでいます。

改めて、バイラルメディアとは何かと言えば、次のようなメディアを言います。

FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアからの流入がトラフィックの中心になっているメディア

出典:バイラルメディアはゴミじゃねぇんだよ(閲覧日:2016年1月29日)

SNSでシェアされやすい面白記事を配信しているメディアのことです。

【バイラルメディアのライター】という職種をオススメしない理由は、たくさんあります。今回はとりあえず、次の1つに絞ってみようと思います。

ライターとしての実績にならない

専門性がない

多くのバイラルメディアには、専門性がありません(〝ギズモード〟のような、切り口が鮮やかなウェブメディアなら話は別です)。下はあるバイラルメディアの求人広告です

あらゆるものに興味をもって、アンテナを張る。世のなかで流行っているトレンドをおさえる。みんな、どんな情報をほしがっているのか常日頃から考える。仕事がある日もない日も関係なく、ビビっとくるものをストックする。ここまでするから、人が面白いと思えるものをつくることができるのです。

出典:ソーシャルメディアのライターの求人広告(閲覧日:2016年1月29日)

「あらゆるものに興味をもって、アンテナを張る」とあります。この意味は、求められる資質は、バズるネタなら何でも書ける(良かれ悪しかれ)「何でも屋」であることが重要ということです。この仕事を退く時、専門性を語れるような積み重ねがないという悲劇も起こりえます。

情報通信コンサルタントの谷本真由美さんは次のように言い切ります。

ゼネラリストは何でも広く浅くできる代わりに、これといった専門がありません(中略)。ゼネラリストには何も「売り」になるものがないのです(中略)。ノマド的な働き方が広まっていくと、その役割や需要はどんどん縮小してゆくように見えます。

出典:『ノマドと社畜 ~ポスト3・11の働き方を真剣に考える』何でも屋さんは能なし, p.92

ゼネラリストには何も「売り」になるものがない。この事実の前に、困るのは会社ではなく、ライター自身です。

給料がでない時間もバブルを追い続けるルーティンワーク

上記の求人広告を読んだとき、志願者は次のことにも気づいていた方が良いと思います。「仕事がある日もない日も関係なく」と、サラリと言ってのけているところをです。この言葉のおかしさに気づいていないと、入社後の姿は「クリエイティブ業では搾取されるのが当たり前」と考えている社畜になってしまいます。

キャリアとしての見返りを望めるなら良いのですが。

業種や経営状態によっては仕方がない側面もありますが、賃金の発生しない残業はボランティアや投資と同じです。

出典:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 ブラック企業・グレー企業・ホワイト企業計算【転職注意口コミ答えてネット】東京都新宿区(閲覧日:2016年1月29日)

悲しくも、人生にあたえられた時間は限りがあります。時間を搾取されることは、単に「疲れる」以上に、失った時間を取り戻せないことの方が恐ろしいかもしれません。

仕事がグレーゾーンなので、実績としてアピールできない

注目してみると面白いのは、サイトに検索機能が備わっているバイラルメディアはあまりありません。サイト内検索がないということは、蓄積された記事(データ)に価値がないことを示しています。一方、新聞メディアで検索機能は言うまでもなく重要な機能で、追加オプション料金も必要なくらいです。

独自ダネ(オリジナルのコンテンツ)がないバイラルメディアは、著作権の問題と背中合わせです。配信する記事には、いまはグレーでも、後にアウトの判断になるものもあるでしょう。このことが意味するのは、せっかく書いた記事を、将来、作品や実績としてアピールできない可能性です。(他のバイラルメディアに転職するなら話は別ですが)。

バイラルマーケティング自体は今後も重要

古風なスタイルのバイラルメディアやキュレーションメディアは、独自のスタイルを打ち出さないと生き残ることは難しいかもしれません。しかしながら、情報を拡散させたり、まとめたり、SEOにとらわれない斬新なタイトルのつけ方、トレンドの把握の仕方、エンゲージの分析の仕方、広告の見せ方など、バイラルメディアには応用が利く実り多いアイデアやテクニックが含まれているのは事実です。いまや、Yahoo!やGoogleの検索だけが、出会いのツールではなくなりました。

マーケティングの手段の一つとして、バイラルマーケティングを知るために、バイラルメディアに身を置くなら、意味があるでしょう。バイラルメディアはメディアとして成熟するための一過程と捉えているメディアなら、共に成長する価値があるかもしれません。

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