パット・マルティーノ“Baiyina” シタールが鳴り響くジャズの思い出

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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 Baiyina

 パット・マルティーノはクールで紳士的な風貌だけど、サウンドはどこかしら狂気的で、凶暴さが織り込まれているような気もする。格好いい大人の手本を垣間見るような気もします。

“Pat”違いのジャズギタリスト

Pat MethenyとPat Martino

 Pat Martinoのアルバム“Baiyina (The Clear Evidence)”は、私の愛聴版です。この素晴らしい芸術作品との出会いは、私の大学時代にさかのぼります。当時、私の友人に経営学を学ぶ「ロバート中島」という男がいました。ロバート中島は、友人のなかでも群を抜いてハンサムでした。しかしながら、そのハンサムさを追い抜くほどに、どこかしらヌケていて、愛すべきテキトーな人物でもありました。

 ある日、私はロバート中島に「俺、ジャズギタリストのパット・メセニーが好きなんだよ」と言いました。ロバート中島は私に「俺もパットの凄いCDを持っているから貸してやるよ」と言いました。私はワクワクしながら、CDを心待ちにしました。

パット・マルティーノ“Baiyina”込められた変態ギターの魅力

 数日後、ロバート中島からCDを手渡されました。アルバムのタイトルは「Baiyina (The Clear Evidence)」。アーティストは、Pat Martinoと表記されていました。

 Baiyina (Clear Evidence)

 パット・メセニーはJAZZのスタンダードなアーティストで、サウンドは上品で、都会的で洗練された、優等生的なギタリストです。それとは似ても似つかない、アシッドな雰囲気漂うCDジャケット。「これって、パットだけどメセニーじゃないと思う……。でも、面白そうなので、まあ聴いてみるか」と借りたのでした。

危険でメチャクチャ格好いい

 友人が大絶賛するCDです。録音されたのは、1968年。ジャズらしからぬサイケデリックなサウンドでした。テキトーな男が貸してくれたCDは、なるほど心底素晴らしかった。

 Pat Martino.jpg

 その後、Pat Martinoの「Baiyina (The Clear Evidence)」は、私の愛聴盤となりました。愛すべき不良の音楽だと思いました。

 Pat Martino “Baiyina”に関しては、変拍子(10拍子とか…)で、バックではシタールが鳴り響き、そこでブルージーなギターを高速で演奏されます。シタールが醸し出す世界は高次の精神的でもありますが、変態的でもあります。はじき出されるフレーズは、どれもが格好良く、ピッキングも正確無比。クールで紳士的なパット・マルティーノは、ギターを通して、凶暴さと不良さと変態さ、一言で言えば隠し持った「反社会的な魅力」を醸し出していると思う。ワクワクします。

 パット・マルティーノを聴くたびに、ロバート中島を思い出します。20年以上会っていないけれど、いまも元気なのだろうか。パット・マルティーノは、いまも現役です。

 

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