スクリプト

耳鳴りのする男の話

美術/創作

30代から美術制作を描き始めました。第35回、第34回 現代童画展入選。第20回 日本の自然を描く展 自由部門入選

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 その男は、音楽の耳鳴りがするそうだ。わたしは、その男に聞いてみた。

「どんな音楽なの?」

すると、男はこう言った。

「壮大で、輝かしく、夢のような耳鳴りだよ」

わたしは、

「あら、そう。それなら、楽譜にしてみれば」

と言った。

すると、男はこう言った。

「ぼくは、楽器がひけないし、楽譜が書けないよ」

わたしは、

「あら、それなら、残念ね」

と言った

すると、男はこう言った。

「胸がつまるような思いだよ。これは音楽なのだろうか」

と言った

わたしは、

「お医者さんに行ったらどうかしら」

と言った。

そして、男は病院に行った。

クスリを朝昼晩、三錠一日飲んでいると、音楽が聞こえなくなったそうだ。

わたしは、

「よかったわね。これで、毎晩ゆっくり眠れるわね」

と言った。

すると、男は

「ぼくはいつでも眠られていたさ。なんだか、もったいないような気もするけれど、病気が治ってよかった。よかった」

と言ったのだった。

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