鉄拳『振り子』をMuseの「Exogenesis: Symphony Part 3」で振り返る

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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by photoAC

毎年、さまざまな流行が現れて、消えてゆきます。鉄拳の『振り子』もその一つなのでしょうか?

鉄拳の『振り子』とは

『振り子』は、2012年3月に深夜の番組企画[1]で鉄拳が発表したパラパラ漫画でした。

イギリスのロックバンド、Museの『エクソジェネシス(脱出創世記):交響曲第3部(あがない)』をバックに、左右に揺れる振り子の中に夫婦の半生をマジックペンで描かれました。放送で「本人が選曲しています」と説明されています。

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この動画をはじめて観みたのは、通勤電車の中でした。涙腺がゆるんで、途中下車したことを思いだします。荘厳で哀愁のある選曲も、絵の展開とぴったりです。

当時『振り子』はブームとなり、映画の実写版も撮られました。あれから5年。ブームは静まりましたが、いま観ても感動します。

罪深い男のあがないが、ウェディングソングに……

Museの楽曲「あがない」は、クラシック曲のように威厳です。ひたすら「やりなおそう」と訴える世界観は、罪深い男の物語とぴったり重なります。

youtubeで「振り子」と検索して上位にヒットするのは「【閲覧注意】 鉄拳公認! もうひとつの 振り子meets 「Endless Road(マイナビウエディングCMソング)」」というタイトルです。Museの曲が添えられていたバージョンは、youtubeからは、ことごとく削除されています。

削除されたバージョンの「振り子」

fumikaが歌う「Endless Road」は、女性のまなざしから歌われた曲です。曲の善し悪しという次元でなく、『振り子』の世界観からずれています。やはり、Museのバージョンがしっくりきます。

鉄拳が描いた『振り子』は、セリフがない無声動画です。登場人物たちは、物語を言葉で説明しません。物語の意味は、観る者の解釈に委ねています。私は周囲に迷惑だらけの人生であったとしても、人はその人として懸命に生き、死ぬ姿は美しいと感じました。

Muse – Exogenesis Symphony Part 3: Redemption (Video) from Muse on Vimeo.

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【脚注】

  1. 2012年3月17日、フジテレビ『ワンフレーム』の企画
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