【Paranel(パラネル)『タイムリミットパレード』】刺激する「記憶」

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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ときたま思い出すようにParanel(パラネル)のアルバム『タイムリミットパレード』を聴きかえしている。同性愛が描かれた美しいMPも秀逸。アルバムに埋め草は一曲もなく、シンプルなコード進行、繰り返されるフレーズ、清逸な言葉が聴く者の気持ちを静めてくれる。

音楽ジャンルとしては、ヒップホップやラップにくくられるようだが、詩の朗読を聴いているような印象もする。どこかしらフィッシュマンズの佐藤伸治に通じるような繊細な世界観を感じる。

タイムリミットパレード

Paranelの音楽を聴いていると、ずいぶん古い景色や若い頃の友だちの姿が目に浮び、懐かしい気持ちを呼び起こされる。

私もいまから数十年前は大学生だったのだが、いまだ何者でなかった当時、いま以上に所在ない不安を感じていた。共に夢や将来や理想を語り合った友人も大勢いたのだけど、みんなどこに行ってしまったのだろう。だけど、私は若い頃に戻りたいとか、昔の友だちに会いたいとはとりたてて思わない。人の関心や興味は移りゆくようで、私自身、ずいぶんと違う場所まで来てしまったようだ。

そんなことを感じさせるのがこの『タイムリミットパレード』である。アルバムには「若い」風景を感じさせる。「懐かしさ」とは、かつていた場所からの遠さのことに他ならないのかもしれない。

友情も永遠だと思っていたし、学校で勉強したことは自分を守ってくれると信じていたけれど、社会に出ると何もかも崩れ去ってゆく。誰しも経験する洗礼を数々受けて、私たちは大人になったわけだ。アーティスト(の作品)が赤の他人である私の記憶を刺激するのは不思議で面白い。

「タイムリミットパレード」以外の作品も掘り下げて聴いてみようと思う。いずれレポートすることにしましょう!

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