The Rolling Stones

【The Rolling Stones】最悪なギターソロ入選曲を聴く Ain’t Too Proud to Beg

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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若き日のミック・ジャガーの想像図(イラスト:筆者)

 名門バンドが黄金期に奏でた「最悪なギターソロ」とは、どんな曲だったのでしょう?

 音楽系キュレーションメディアamass[1]は、Web読者投票「ワースト・ギター・ソロ TOP18」[2](2017年4月29日)の結果、ザ・ローリング・ストーンズ(以下、ストーンズ)の不名誉なランキング入りを伝えています。

 ロック界の天然記念物ストーンズは、ザ・ビートルズの唯一無二のライバルで、21世紀になった今でも転がり続ける生きた化石です。1962年の結成以来、解散したことは一度もありません。ボーカルのミック・ジャガーは昨年72歳にして8人目の子を授かり、飛び出すエネルギーは、公私ともにまだまだ現役です。

 読者が最悪なギターソロとして選んだのは「Ain’t Too Proud to Beg」という曲です。話題のバージョンが世に出たのは1974年10月25日で、ストーンズの黄金期にあたります(なにをもって黄金期とするかは、諸説ありましょうが)。この時期には、流麗なギターソロを聴かせる名手ミック・テイラーも在籍していました。それなのに、どうして?

 たしかに、印象が薄いソロギターです(1分40秒頃)。その理由はPVを見て理解できました。このソロを弾いているのは、画面左側に立つ長い金髪のミック・テイラーではありません。ドラッグに溺れるキース・リチャーズだったからです。ギターのシールド(ケーブルのこと)に足をからませて、いまにも卒倒してしまいそうです。

 この演奏に限りませんが、ストーンズ在籍時(1969〜74年)のミック・テイラーは楽しそうに見えません。2ヶ月後の1974年12月には「キースのドラッグが原因でメンバーがバラバラな状態だった」[3]という理由で脱退してしまいます。

 ソロを弾かないミック・テイラーの姿は、心ここにあらずに見えます。存在感がありません。そして、彼がいなくなった、今日のストーンズ・サウンドを前もって伝えていたように感じました。

 ストーンズの黄金期はいつか? この議論は、とても楽しいテーマです。わたしにとってはミック・テイラー在籍時の1969〜74年。「Ain’t Too Proud to Beg」のいまひとつ物足りない演奏は、黄金期の終わりを告げるレクイエムのように聴こえてきます。


【脚注】

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