【小椋佳「老猿の会」】アートとビジネスのトップを駆け抜ける人生

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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小椋佳さん(イラスト:モクソン ホウ)

小椋佳さん(イラスト:モクソン ホウ)

優しい美声は、いまだ少年のよう。そのお声の主は、おんとし72歳。

不惑の四十とはいえ、人生に迷いは多い。そうだ、人生の大先輩の話を聞きに行こう。そう思い立って訪れたのが、日経ホールで2016年6月19日に行われた小椋佳さんのイベント「老猿の会」。小椋佳さんは「シクラメンのかほり」「愛燦燦」「夢芝居」など数多くのヒット作品を生み出した。

彼には二つの顔があり、トップアーティストとして、エリート銀行マンとして、時代の最前線を駆け抜ける。そんな小椋佳さんだからこそ、アートとビジネスを織り交ぜた現場を語り聞かせてくれました。大人が楽しめる、良い刺激のあるイベントだったと思います。

ミュージシャン活動で、美空ひばりさんのアルバム「旅ひととせ」に楽曲を提供した際の逸話は面白い。なんでも、美空ひばりさんぐらいの大物になると、作詞家や作曲家は、レコーディングに立ち会うのだそうです。しかし、行員であった小椋さんは、立ち会う時間がありません。痺れを切らした美空ひばりさんは、レコーディング中にスタッフへ尋ねたそうです。

美空ひばり:この曲を作った人はどこにいるの?

スタッフ:小椋佳さんという方なのですが、お勤めをされているので、今はここにいません。

美空ひばり:オツトメ?あら、刑務所に入っているの?

同じ「オツトメ」という言葉でも「職務中」「刑務中」といった具合に、面白い食い違いが生まれるようですね。

ふだんはロックなどを聴くことが多いのですが、甘く優しい歌声の歌謡曲も素晴らしいと感動しました。チケットが一枚しか手に入らなかったので、今回は一人で訪れたのですが、次はぜひ家族で行きたいと思いました。ああ、あんな大人に私もなりたい…。

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