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ズジスワフ・ベクシンスキー 悲劇は人生の慰めにもなる劇薬 

レビュー
モクソン ホウ

法政大学文学部哲学科卒。編集関係の業務に従事。金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味は絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。

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 想像を超えた世界は、時間の彼方や、地平線の向こう側のように、宇宙の外側へ誘ってくれます。残酷で悲しく、美しい絵を描く画家、ズジスワフ・ベクシンスキーを紹介します。

 

復活しなかったイエス

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 復活しなかったイエスを連想させます。ベクシンスキーは、墓場や、十字架にさらされたままの刑死者を多く描いている。

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世界の亡骸

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 ベクシンスキーは、終末の世界を描く画家。生の象徴とも言える性愛も織り込まれている。生殖が繰り返され、この世界は継続されていく。それは尊いものなのか、それとも業のようなものなのか……。答えは誰にも分からない。亡骸となった性愛の行為自体に、消去法のように残る「愛のようなもの」も感じさせる。

 通常、癒やしに求めるものは、優しさだったり、穏やかさだったりするもの。でも、それらは時に陳腐なものになりがちだ。スピリチュアル産業をかいま見ると、地獄の沙汰も金次第。癒やす目的ゼロのベクシンスキーの怖い絵も、恐ろしさが度を超えているため無心の境地に誘います。一瞬思考が停止するので、癒しに通じることもある。

死に方入門としてのベクシンスキー

 私たちは、生まれ方も学ばなかったが、死に方も学んでいない。この世界を共に生きる者たちは、死んだことがない。それゆえ死に方を教えてくれる人は誰もない。

 ベクシンスキーの絵画には、真実味のある死が描かれている。ギーガーの毒々しいだけの絵と違いだと思う。ギーガーが描く死は、単に悪趣味なだけで真実味がない。ベクシンスキーの悲しい絵は、私たちが生きる世界が描かれている。美しく、残酷で、悪趣味なこの激しい世界。犯すことができない圧倒的な静寂が織り込まれている。逃れることができない、死。そして、「死に至る過程」と、「死自体」はまったく別のことであることも予感させる。どんな死に方(殺され方?)をされようが、静寂な死はやってくる。

 参考:beksinski公式サイト

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