金融業界のブラックな実態!雨宮鬱子さん「証券会社で働いたらひどい目にあった」

学びと読書
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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いまのご時世「会社選びは3回に1回失敗する」[1]とも言われ、仕事選びは難しい。一見はなやかに見える証券会社も例外でなく、雨宮鬱子著「証券会社で働いたらひどい目にあった 」では、サバイバルな労働環境を描きます。

パワハラ傾向の上司や先輩、特定の社員と仲の良くなるダメな管理職、労働の質を下げる長時間労働、過酷なノルマ、新人いびり、媚び、かげ口、密告…。これらの暗い要素が、金融商品を扱う特殊な企業文化とも絡み合い、なんとも説明し難いどす黒い世界を形作ります。

本書はブラック企業内の悲哀も興味深いですが、証券会社との付き合い方の参考にもなります。

証券会社は売買の仲介をするが、どちらかというと売るよりも買ってほしい。売ると代金を引き出されてしまうからだ。なるべくお金は入れてほしい(買ってほしい)

出典:証券会社で働いたらひどい目にあった (ミッシィコミックス) | 雨宮鬱子, 2014年, p117

証券会社では金融商品を買わせる対象を、金融リテラシーの低い人たちに向けがちです。とりわけ、高齢者を餌食にします。

証券会社の営業は、顧客が儲けることよりも、高額な手数料のノルマ達成を優先します。証券会社の社員たちもクビにならないよう必死だからです。こうした歪みがもたらすストレスは、精神疾患や顔面麻痺など、若い社員たちの心身をむしばみます。

この悲惨な世界を妻に話すと、「金融商品は興味はあるけど、証券会社のすすめる商品は買わない」と言いました。しかし、もはやジョークではないと思います。金融商品は、証券マンへ他人任せるよりも、自分で指標を調べ、自分の注文したいタイミングで、自分の操作で主体的に約定することは大切だと思いました。ネット系証券の方が手数料も安いですしね。

ところで、現在のマイナス金利時代は、預貯金よりも株式などの市場へマネーの流れが生まれます[2]。定期預金にお金を預けていても、あまり増えません。したがって、株式、債券、投信、ETF、REIT…など、なにかしら得意な分野で資産運用をする必要があります。しかし、資産運用を他人任せ(リテラシーが低いまま)ではいけません。証券会社は甘くないことを、覚えていた方が良いでしょう。

最後に、舞台となったこの証券会社は、どこなのでしょう。私は、主人公のデスクに置かれた卓上カレンダーから外資系のP社と想像しました。なぞ解きも楽しい一冊です。


【脚注】

  1. Amazon.co.jp: 会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書) eBook: 山崎元: Kindleストア
  2. 出典:資産管理コラム マイナス金利時代は、どこにお金を預けたらいいか? | モーニングスター、閲覧日:2017年1月13日

    マイナス金利の導入で為替相場を円安へ誘導し、輸出企業の業績を後押しすることで株価の回復を狙ったもの

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