PERFECT HUMANは、あなたに寄り添ったり、ましてひざまづいたりしないだろう

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

木村 邦彦をフォローする
ラジオとお魚

ラジオとお魚

お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」が母体となったダンス&ボーカルユニットのRADIO FISHの世界観は印象的です。「アイム・ア・パーフェクト・ヒューマン」と挑戦的なフレーズを含む作品「PERFECT HUMAN」[1] からは、彼らの自信が伝わってきます。

彼らは謳います。世界は必ずしも平等と限らない。敗者はPERFECT HUMANの支配の前にひざまづけ。PERFECT HUMANは、勝者でありトップ・オブ・ザ・ワールド。

もし世界が100人の村だったら、1番目の頂点。縦の世界観に君臨する、神聖にして犯してはならない、あがめ奉る対象なのです。PERFECT HUMANは、決してあなたに寄り添ったり、ましてひざまづいたりしないでしょう。

RADIO FISHの「縦」の世界観は、あまりにも単純で、現実ばなれしてます。だからこそ、聴き手は「漫才ネタ」の延長として捉え、面白さを感じます。ただ、どのように解釈するかは、時代、文化、地域の違いも関係します。PERFECT HUMANは、人々にとって人生の目標になることもあれば、蹴散らすべき標的になることもあります。

ここで、気になる国があります。それはアメリカです。この国での貧富の差は拡大し、もはや中間層がなくなり、1%の富裕層と99%の貧しい層という構図になりつつあります。アメリカの白人系労働者は、海外からの安い資材や、移民の安い労働力によって職を失い、家族を失い、友人を失い、辛い現実から逃れるために麻薬やアルコールに溺れ、希望をなくして死んでゆく者も多い[2]

こうした状況のもと、99%側にいる人々が目指すのは、3つだと私は思います。

  1. 1%の富裕層側になる
  2. 諦める
  3. チェンジを求める

2016年11月9日アメリカ大統領選挙では、現状に不満を抱く層は、あがめ奉るものではなく破壊するものを求めました。エリートや富裕層といった1%の代表としてヒラリー・クリントンは、あがめ奉る「PERFECT HUMAN」だったのかもしれません。

トランプ氏が事実上、次期大統領に決まりました。海を隔てた日本から、中傷を得意とするトランプ氏の振る舞いをメディアと通して見るかぎり、決して紳士的に見えません。アメリカという超大国をまとめ上げられるのか、その手腕は未知数です。彼もあがめ奉られる「PERFECT HUMAN」になるのでしょうか、それとも国民に寄り添うヒーローになれるのでしょうか。これからに注目です。


【脚注】

  1. アルバムの表題曲である「PERFECT HUMAN」は、グループの6作目配信限定シングルとして2015年12月23日に発売され、YouTubeに投稿されたミュージック・ビデオの再生数が2016年3月時点で1600万再生を突破するなどの反響を呼んでいる。PERFECT HUMAN – Wikipedia
  2. NHKオンデマンド | NHKスペシャル 「揺らぐアメリカはどこへ 混迷の大統領選挙」
タイトルとURLをコピーしました