【牛窪恵さんの新聞記事】古本屋の開業が増えている

人生(LIFE)
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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古本

古本屋に憧れて開業する人が増えているそうです。2月10日付の日経新聞が伝えるところによれば、「個人運営を含むネット上の古本屋は15万店を超える」という。

「本が好きだった」「好きを仕事にしたい」というピュアーな動機で開業する人もいるけれど、自分で本の値段を決められることも古本屋の特徴であり魅力です。

ごく一般的な本屋さんでは、離島だろうが山奥だろうが、日本中どこでも原則として一律の値段で売らなくてはいけない。このルールのおかげで出版文化は守られている側面もあるが、人気のない本でも値下げはできない。売れなかった本の多くは出版社へ戻され、違う本屋さんで同じ値段で再配本される。このシステムを「再販価格維持制度」というけれど、古本屋にはこの制度がない。

だから、各古本屋で本の値段が違う。市場の評価を受けて新刊より高くなることもあれば、安くもなる。株式市場みたい。とっくに絶版本など、意外な発掘と巡り会うことも楽しい。

ちなみに私の所蔵している本のほとんどが古本。学生時代から、売っては買い、買って売るの繰り返し。この循環がうまくゆかないと、本はたちまち部屋に溜まり続け、ついには部屋の床が抜けて落ちることになったり、壁四方が本棚になってしまう。地震が来たら下敷きになってしまう恐怖に怯えて暮らすことになるので、身の危険と隣り合わせ。だから、なるべく本は増やさない努力が必要。

仕事や趣味で知識を必要とする人は本はため込まず、売る術を覚えなくてはならない。あししげく古本屋に通い続けている自分自身を振り返って思うのは、書店や出版社の不況は今後も続くけど、古本屋の存在はとうぶん必要とされるだろう。

人間は社会的な動物なので、つながりを求めたくなる。つながりの一つとして、売り手と買い手を繋ぐ古本屋は素敵な場になるでしょう。本を買う人、まして店主のためだけでなく、売る人、さまざまな人にとって大切な場であるのです。

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