歴史

夜に爪を切ってはいけないが、伸び放題の鼻毛は見つけ次第に切るべき理由

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木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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なぜ夜に爪を切ってはいけないのか

イラスト:モクソン

 ある人が言いました。「夜に爪を切ると親の死に目に会えないという迷信があるけれど、鼻毛は切っても問題ない」。なぜ夜に爪を切ってはいけないのかという民俗学的な理由と、鼻毛の切り方について私的な見解を書いてみます。

「夜に爪を切ると親が亡くなる」という言い伝えには、日本の伝統に根ざした意味があります。かつては死者を埋葬する際、近親者が自分の髪や爪を一緒に埋める習慣がありました。この習慣が広まると、爪を切ると親の死に目に会えないと信じられるようになったのです[1]

 なぜ夜が忌み嫌われるのかについて考えてみましょう。昔は電気がなく、照明器具も発達していなかったため、暗がりで爪を切ると深爪をしたり、足の指を傷つける恐れがありました。このような危険な行為が親不孝の象徴とされ、夜に爪を切ることが忌まれるようになったのです。

 夜に爪を切ることを忌み嫌う背景には、親不孝を戒めると同時に、子に対する愛情が込められているかもしれません。現代では電気があり、照明器具も発達していますので、夜でも安心して爪を切ることができるでしょう。

 最後に、鼻毛の切り方について考えてみましょう。爪とは違い、鼻毛は鏡を見ながら間接的に行う作業です。しかし、伸び放題の鼻毛は見つけ次第に切るべきです。鼻毛が伸びることと爪が伸びることは、異なる意味を持ちます。出勤やデートの際に飛び出た鼻毛に気づかずにいることは避けたいでしょう。周囲の人たちにも、どうしてもその鼻毛を抜きたくなる押さえがたい欲望を惹起し、大変に葛藤を生みます。もしくは、なぜジャングルのような鼻毛をにしているのか、気になって仕事に集中できなくなり、哲学してしまう人だった出かねないのです。

 時には、リスクを冒さなければならないこともあります。言い伝えには、親離れし、困難に立ち向かう勇気を持つことが大切だという意味が込められているかもしれません。


【脚注】

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