上野動物園でオオカミを見て、画家ベクシンスキーの魅力を感じる 

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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 flamingo

 東京に住んでいても、東京タワーに登ったことがないという話はよく聞きます。上野動物園も類する話です。私は東京に住み始めて十数年になりますが、先日はじめて上野動物園を訪れました。

園内の動物たちは人間のようだった

 動物園で感じたのは、近所のノラネコたちの方がよっぽど野性味があることです。動物園の動物たちは闘争心を失っていました。

 ペンギン
ペンギンたちは時間つぶしに泳いだり、寝そべったりしていました。

 カバ

 カバは想像していたよりも巨大でした。アフリカでは1年あたり約2900人がカバに襲われて死亡しているそうです[1]。野生ではどう猛なカバも、動物園では非常に大人しいものです。飼育員がホースで口のなかに水を流し込み、気持ち良さそうにうがいをしていました。

イヌになる前

 オオカミ

 安心しきった動物たちのなかで、オオカミだけは闘争心を感じさせました。一頭のオオカミが、落ち着かないように、檻のなかを行き来しています。獲物を探したり、食べものを隠したり、ハングリーでした。あわよくば、脱走したいと考えているように見えました。
オオカミ

 足がほっそり長く、キリッとした顔立ちはハンサムです。巨大なキツネに似ています。

 イヌのDNAの組成は、オオカミとほとんど変わらないと言われています[2]。ですから、オオカミはイヌに似ているものだと思っていましたが、印象がだいぶ違います。

 オオカミ
檻の奥では別のオオカミが眠っていました。媚びない姿に孤高さを感じます。

ベクシンスキーが描いた「オオカミ」を思い浮かべた

 ほっそりして、足が長い生き物。落ち着かない様子で、いつも何かを探し求めるオオカミの姿は、「ハングリー」と形容するに相応しい気もします。本物のオオカミを目の前にて、ふと不気味な絵を思い浮かべました。

 いますぐにでも墜落してしまいそうな気球の下で、不気味な生き物が待ち構えている光景。ベクシンスキーは、作品のなかで細長いイヌのような不思議な動物を描くことがあります。あの生き物は、オオカミに違いありません。

 https://www.youtube.com/watch?v=0Ubkwx56I1g

参考資料

ベクシンスキ作品集成 1---BEKSINSKI THE COLLECTED WORKS I PAINTINGS & PHOTOGRAPHS (Pan-Exotica)
ズジスワフ ベクシンスキ
河出書房新社
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【脚注】

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