中国の監視国家ぶりにミシェル・フーコー『監獄の誕生』を思い出した

人生(LIFE)
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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IoT、AI、インダストリー4.0……。人手不足が深刻になりつつある超高齢化社会の日本。ITを活用する重要性はますます高まっています。

ところが、この時流にあってEメールを届けられない友人がいます。彼はパソコンもスマホも嫌いなのです。だから残暑見舞いは葉書で書きました。これはこれで風情があるものです。

彼とは学生時代に知り合いました。隣町にある名門大学で哲学を勉強していて、卒業後は人文系の老舗出版社で最高経営責任者(CEO)を務めていました。ところが今年になって「工場で働く」と社長職を譲り退社してしまったのです。

出版業界は変化しつつあります。「紙の本」をこよなく愛する友には耐えがたい変化だったのかもしれない、と思いました。

「紙の本」の市場規模は年々縮小が進んでいます。日本の出版業界の総売上高のピークは1996年でした。それが2017年になると紙の出版物(書籍と雑誌の合計)の推定販売金額は10年間で3割も減らしています[1]。情報発信をなりわいとする会社は紙から電子版へ活路を見出す必要も出てきます。電子書籍は使ってみると便利なもので、本の置き場所にも困りません。私も愛用者の一人です。

そうはいっても、テクノロジーの進展は諸刃の剣。便利だと言ってばかりいられません。例えば共産党一党独裁の中国はテクノロジーが生み出した申し子のような監視国家です。

中国が設置している監視カメラは1億7000万台以上[2]と言われています 。モノとモノとがネットでくまなく結びつき、集まった膨大な情報を人工頭脳が解析します。個人情報は国家に一元管理され、人々は個人情報を差し出すことが豊かな生活の保障になっている。

このような世界に染まりきらないためには、Eメールが届かない友の生活にはアドバンテージ(有利)があります。

意見が違ったり、けんかをすることもありますが、大切にしたい友人の一人であることは間違いありません。「中国の監視国家」をみていると、ミシェル・フーコー監獄の誕生』を思い出す」 このような文面を議論できる友人は貴重です。

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【脚注】

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