「棚木竜介と図書館 / e.p.」懐かしさ、親しさ、温かみを感じさせる粒よりの4曲

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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大学時代の友人から、シンガーソングライター・棚木竜介タナキリュウスケ)さんの作品を教えてもらった。取り寄せたミニアルバムの「棚木竜介と図書館 / e.p.[1]を聴けば、なるほど素晴らしい。だけど、ディスコグラフィー、バイオグラフィーなどアーティストの公開情報は少ない[2]。私が得られた情報源は、Twitter[3]、tumblr[4]、Facebookで得た断片。そして、手元にあるこのCDRである。

この作品の音を頼りに、アーティストの姿をつかんでみようと思った。

「館内」のシールに注目!

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1曲目の『チェンジ・ザ・ワールド』は、メッセージソングのような曲名だけど、歌われているのは社会のことではなく「君」のこと。モコモコブンブンの、印象的なベースから始まる。

3曲目の『やさしい町』では「金がもう無いとか/あの頃は良かったねとか/そんな大してかわんねよ」というフレーズに、思い当たるものを感じ、思わず苦笑いした。

フォーク、ロック、ブルース、ボサノヴァがないまぜになったような、ジャンルにとらわれないサウンドが良い感じ。棚木竜介さんが用意した世界で、参加ミュージシャンたちも心地よく演奏している。

このアルバムの要は、北山ゆう子さんのドラムだ。曽我部恵一さんなどのバックもつとめた[5]キャリアを持つドラミングは、小気味よく疾走し、非常に気持ちよく太鼓を鳴らす。動画で見るお姿は、優雅さも感じるほど見事だ。ギタリストの渡瀬賢吾さんも雄弁だ。ピッキングの強弱で歪みを生み出す音色はシブい。とりわけ2曲目「ソフロ」で聴かせるブルージーなフレーズに鳥肌が立った。ベーシストでキーボディストの不知火庵さんは、音と音の間を適切に紡ぐ。適切に残された音の間は、聴き手にミュージシャンとの距離感を伴って伝える。

このアルバムでは、快調で、健やかな大人の世界を見せてくれる。エイトビートをめったに聴かない妻も、「あら、いいわね」なんて言っていた。もっともっと世間に知られてゆくべきミュージシャンだ。


【脚注】

  1. OURLIFE MUSIC、2014年発表
  2. 2016年7月31日段階
  3. 棚木竜介(@tanakiss43)さん | Twitter、閲覧日:2016年7月31日
  4. ホタテtumblr、閲覧日:2016年7月31日
  5. 棚木竜介と図書館 / e.p. | OURLIFE MUSIC」大森元気、【商品紹介・解説】より、閲覧日:2016年7月31日
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