『三丁目の夕日』の魅力は“とってつけたようなハッピーエンド”

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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2014-10-28 08.38.58

描かれている話は基本的に悲劇である

独身時代から集めている『三丁目の夕日』。基本的に、一話読み切りの形式です。どの話を読んでも「いい話だな〜」とため息をついてしまう。このブログでも「三丁目の夕日」と記事検索をすると、2006年頃の記事がヒットする。いつ読んでも感動は変わらない。

『三丁目の夕日』の魅力は、“とってつけたようなハッピーエンド”だ。別れの後の再会とか、出会いとか。過去の不幸(だけど、いまは幸福な生活者)とか……。しかし、これらポジティブなオチは、どこかしら“とってつけたような”ものだ。

東京大空襲で死んだ妻や娘……。病弱な妹が貯めた修学旅行費を賭け事に使ってしまった兄……。失踪した夫を探すために街の片隅で宝くじを売り酒に溺れて死ぬ女……。などなど。

たとえば、こららのような話は、“とってつけたようなハッピーエンド”で中和してくれなければ、とてもヘヴィーな悲劇すぎて読み通すことはできないかもしれない。

作家・西岸良平さんが描きたいのは、良質の悲劇物語なのだと思う。悲劇には、読む者にも、どこかしら身に覚えがあるありふれたものだ。読者の気づかなかったり忘れていた過去の過ちや不幸は、『三丁目の夕日』で描かれた不幸を通して理解され、癒やされる仕組みがあるような気がする。

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