『紙兎ロペ』 映像作家の内山勇士(ウチヤマユウジ)さんの魅力

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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 紙兎ロペ「ガチャガチャ編」 - YouTube 2013-11-17 09-26-01.png
紙兎ロペ「ガチャガチャ編」、YouTube
『紙兎ロペ』は、映像作家の内山勇士さん一人で全キャラの声と制作から声優までを担当していたショートアニメーション作品。ゆるく、”独特の毒”が魅力でした。内山さんがどのように、ひたむきにキャラクターを作り上げたかは、現在は終了したブログ( ※1)からもかいま見ることができます。
2009年夏から全国のTOHOシネマズの幕間上映というスタイルで発表され、現在はフジテレビ系列「めざましテレビ」にて放送中です。

 

作家・内山勇士さん

作品に命を吹き込んできた内山さん自身は、2013年5月でその全ての制作から降板(解任)されています。原作者なしで一人歩きをしはじめる物語、たとえば「サザエさん」や「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」みたいでね……。でも、これらの作品との違いは、内山さんご自身は、健在でいらっしゃるということ。作品ともども、才能ある作家の活躍にこそ注目してゆきたいものです。

間(ま)が優れて面白い!

『紙兎ロペ』の舞台は下町。高校2年生の紙兎「ロペ」と高校3年生の紙リス「アキラ先輩」を中心に繰り広げられるショートストーリーです。
会話の間(ま)が、素晴らしい。物語中に、音楽は特に使われていません。静かな日常環境なかで、交わされる、高校生の日常会話。笑い声と生活音が、淡々と続くだけ。これが世界のすべて、魅力のすべてといっても良いでしょう。

有毒と解毒の会話術!?

会話の間(ま)の面白さは、会話術そのものことともいえます。噺(はなし)の道にも通じましょう。傍若無人でチャキチャキの江戸っ子風のアキラ先輩。でも、どこかしら優しい。アキラ先輩は頭の回転も速い。
一方の紙兎「ロペ」は、傍若無人なアキラ先輩から言葉へのつっこみで、アキラ先輩の傍若無人な言葉を解毒してゆきます。

シュールさと毒が更にパワフルだった「アルツハイム」

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アルツハイム「銭湯」、YouTube
内山さんの作品の源流ともいえる作品に「アルツハイム」(2005)があります。一般向けとは言いがたいかもしれません。よりシュールさが際だつ、理解不可能な世界観といざないます。内山さんの作品の魅力は、まさに”シュールな毒”なのかもしれません。

無害な作品とならないかは、今後の観察のしどころかも?

作家から切り離されて一人歩きをし始める物語。もともと含まれた”独特の毒”自体は、作家自身からは切り離すことはできないものでしょう。無害なゆるキャラとならないことを祈るばかりです。
今後の紙兎ロペが、どのような”独特の魅力”を保ちつづけるのかは、ファンの観察のしどころかもね。
はじめて観るなら、DVDで1〜2巻はオススメです!

【参考】
※1″2007年 09月 19日 試行錯誤しながら…”、http://alzblog.exblog.jp/6179362/、2013年11月17日閲覧。

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