ロバート・モーガン(Robert Morgan)「Bobby Yeah」がもたらす悪趣味な癒し

Illustration by kimukuni

学生時代に文芸評論家の小谷真理さんの講演会を企画しました。小谷さんによりますと、スプラッタームービーを好んで見る傾向があるのは女性の方なのだそうです、既存の世界観(男性中心の世界観)が壊れてゆくことに、カタルシスを得ている、という指摘でした。

かわいいモノ、きれいなこと、涙なくして語れない人情モノ…ばかりで人の心は癒やされるとは限りません。破壊や崩壊が、私たちのカタルシスや快感を生むこともあります。

生物学的にも、社会的にも根っからの「男性」である私ですが、悪趣味な映像に、癒やされることは、常々経験します。『Bobby Yeah』というアニメーション映画もそのひとつ。2011年にロバート・モーガン(Robert Morgan)が発表しました。ファンタジア国際映画祭などの映像フェスティバルでも高い評価を得ているストップ モーション短編映画です。

登場するキャラクターは、みな不機嫌です。悪性腫瘍のようなコブだらけの顔や体、内臓がはみ出した赤ん坊…。どれもが、恐怖をそそります。体に隠されたスイッチが押されるたびに、物語は次に進んでゆきます。このスイッチは、まるでセクシャルななにかを象徴しているかようです。

劇中、言葉はひとことも発せられません。世界の理由も原因も、何も説明されてませんけれど、誰も幸せでなさそうです。性欲と破壊欲だけで話が進行しています。そうは言いましても、これらのエネルギーの源には「肯定されたい」とか、「愛されたい」というパワーも感じます。世界の不幸の縮図が、ここに描かれていて、その原因も理由もはっきりとは説明されていないのですけど、まさにそうですよな…と納得させる不思議なダークファンタジーです。

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この記事を書いた人

木村 邦彦のアバター 木村 邦彦 編集ライター

法政大学文学部哲学科卒、編集ライター。専門紙記者の後、支援施設で依存症当事者のサポート業務に携わる。日刊SPA!、週刊金曜日、図書新聞、netkeirinなどで掲載。【連絡先】business.kimukuni@gmail.com

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