【変なオッサン】新宿の世界堂へ行く途中、都営地下鉄で遭遇した話

レビュー
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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電車のオッサン(イラスト:モクソン ホウ)

電車のオッサン(イラスト:モクソン ホウ)

先日、画材を補充するため、世界堂がある新宿に行きました。近々、グループ展に参加する予定ができ、絵を描かねばならぬのです。

電車やら地下鉄やらを乗り継いで、あれはたしか、都営地下鉄だった。どこかの駅で、風采のあがらぬオッサンが乗車してきた。かくいう私もオッサンですが。

見知らぬオッサンは眼光炯々として、異様に彫りの深い顔立ちに見えた。しかし、どこか間が抜けている。よく見れば埴輪顔の日本人なのだけど、眉間にイチゴぐらいのタンコブがあるのに気づいた。あのタンコブのせいで、彫りが深いように見えただけだったのです。

私は、ギョッとした。なんで、眉間にタンコブがあるんじゃ。ケンカでもしたんだろうと推量した。

電車のオッサン(イラスト:モクソン ホウ)

オッサンの眉間にはイチゴぐらいのタンコブ(イラスト:モクソン ホウ)

オッサンは、電車に乗ってからというもの、そわそわして、妙に落ち着きがありません。挙動不審です。座っては、また立ち上がり、席を変えます。ピンボールゲームのボールみたいに、左列の席、右列の席という具合に移動してきます。はじめは遠くにいたのですが、だんだん近づいてくる。はっきりいって、オッサンが近づいてくるのは、とても嫌だった。周囲の乗客は、オッサンを誰も止めない、止める理由もない。無関心を装っている。オッサンは、至近の席までやってきた。と、突然、「ごんごんごん!ごんごんごん!ごんごんごん!」と彼自身の眉間を連打しはじめた。私はビビった。

おのれの眉間を連打するオッサン(イラスト:モクソン ホウ)

おのれの眉間を連打するオッサン(イラスト:モクソン ホウ)

突然のことに、「ヒッ!」と私は声を出してしまったものの、よくよく冷静に観察すれば、死亡するほど、頭をどついているわけではない。このオッサンは、いったいぜんたい、どういうつもりでこんなことをしているのだろう。人生を悔いて小突いているのか、単にかゆいのか、第三の目を刺激しようとしているのか。ただ、明確に分かったことが、一つだけありました。「オッサンの眉間にタンコブがある理由は、なるほど、これだったのか!」と合点がいったことです。

自らの頭を連打する見ず知らずの人物に遭遇したとき、どのような行動をとったらよいのでしょう?自傷行為なのだろうか、自慰行為なのだろうか。止めるべきなのか、むしろ逃げるべきなのか。などなど、さまざまな思考がぐるぐると渦を巻き、私は目的の駅に着いたのを幸いとばかりに、地下鉄を降りた。オッサンにかまけてなどいられぬ、絵を描かねばならぬのだ。

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