阿佐田哲也『競輪教科書』の教えに従ったところ……いまの競輪でも通用するだろうか | 快適暮らし研究会

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阿佐田哲也『競輪教科書』の教えに従ったところ……いまの競輪でも通用するだろうか

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随想


ここ毎日、車券がはずれてばかりで、悲しみが心に広がっている。果たしてこの悲しみの苦境から逃れる方法はあるのだろうか。『麻雀放浪記』で有名な作家・阿佐田哲也は競輪についても言及している。『競輪教科書』(小学館、1989年刊)では以下のような車券の買い方を提案していた。

「初日の予選においては、◎、つまり本命となる枠を選び、人気の薄い枠を組み合わせてみるのだ。六つの枠が存在するから、一番人気のない枠の二着、つまり◎から六番目の枠を選択する。そして次に、人気のない五番目の枠へと進む。この二つを買うことで、一つや二つの的中が期待できるだろう」

色川武大 & 阿佐田哲也『色川武大・阿佐田哲也 電子全集22 阿佐田哲也の異色企画『競輪教科書』ほか より

穴狙いだ。G1〜G3のようなグレードレースと呼ばれる大きな開催なら通用するだろう。車番は競走得点順に並んでおらず、9車が走るので毎回買う車券もランダムな数字の組合わせになる。

しかしこの手法は、当時存在しなかった“ミッドナイト”の開催では効果を発揮しない気がした。競走得点順に車番が並び、1番車が本命ということになり、6〜7番車が人気のない枠となってしまう。毎回毎回、似たような車番の組合わせになってしまいとてもつまらない。

そもそも、私たちは穴を狙うことになるのだろうか。穴には夢やロマンがあり、それ以上に絶望と悲しみとも出合う。

迷える存在にとって、ささやかな成功体験は生きる上で欠かせないものではないだろうか。たとえ購入金額に対して払い戻しが少ない「トリガミ」であっても、的中は的中と言えるのではないだろうか。

小さな成功体験を積み重ねるのか、それともまだ見ぬ「ブラックスワン」を待ち望むべきなのか。私は彷徨い続け、ますます深い悲しみの底へと沈んでいくのである。私の生きる迷いが競輪場のトラックで回り続けている。結局、私は穴を狙うのだった。

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