Just Right!

校正ツールJust Right!7 Proに「6」からバージョンアップするべきか?

技術
木村 邦彦

法政大学文学部哲学科卒。記者、編集者。歴史、IT、金融、教育、スポーツなどのメディア運営に携わる。FP2級、宅建士。趣味はエアギターと絵画制作。コーヒー、競輪もこよなく愛す。執筆のご依頼募集中。

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ジャストシステムのJust Right!は新聞社や出版社などで使われている校正の定番ツール。個人でも購入できます。このほど6から7にバージョンアップされました。今回のバージョンアップで何が変わったのでしょうか。実際にバージョン7にしてみた印象を書いてみたいと思います。

 日本語入力システムや文章校正支援ツールなどのソフト開発を手がけるジャストシステムは8月18日に、6年ぶりのバージョンアップとなるJust Right!7 Proを販売開始しました。Just Right!はNTTデータのPress Termと並ぶ、校正の定番ツールです。

写真 Just Right!7 Proの画面。まさに、この記事を校正しているところ

 Just Right!7 Pro(以下バージョン7)はWindows 11と10のHome/Pro/Enterprise/Educationといった各エディションで動作します[1]。一つ前のバージョンとの違いは▽約70年ぶりに改訂された公用文のルールに対応、▽「2021」など新しいバージョンのMicrosoft Officeと連携できる、▽高解像度ディスプレーに対応、などが挙げられます[2]

 4Kのような高解像度ディスプレーを使用できる環境の場合、バージョン7では画面右側にある校正結果のパネルが見やすくなります。指摘結果の思わぬ見落としを防ぐ効果が期待できそうです。Microsoft Officeと連携させて作業したい場合はWord、Excel、PowerPoint、Outlookのバージョンで2021、2019、2016、2013に対応しています。

 筆者がもっとも重要だと感じるのは、Just Right!6 ProはWindows 11に非対応ですが、バージョン7では対応していることです。Windows 10の延長サポート期間は2025年10月14日で終了します。Windows 11の新しいPCに買い換える場合には、Just Right!もバージョン7にしておく必要があります。

 もっとも、Just Right!をMicrosoft Officeのような業務アプリケーションと連携させず、公用文ルールも使う予定がなく、Windows 10環境で作業している場合、Just Right!6 Pro(以下バージョン6)との違いをあまり感じないかもしれません。実は、筆者はこのタイプに属しております。新規追加や機能向上した項目の実力を感じるにはもう少し使いこんでみる必要がありそうです。

▼表 Just Right!7 Proでチェックできる項目。赤文字は新たに加わった機能、緑文字は向上した機能、黒文字はバージョン6から変化がないと思われる機能(ジャストシステムの資料を基に作成)

項目 説明
約物チェック リーダー・ダッシュ、行頭の空白、疑問符や感嘆符の後の空白、閉じ括弧前の空白、閉じ括弧前の句点
誤りチェック 誤字脱字(擬音語・擬態語を含む・含まない) 、仮名遣い、慣用表現、呼応表現、ら抜き表現(括弧内もチェックする・しない) 、さ入れ表現、同音語誤り、二重敬語、西暦・和暦(和暦の初年)、略称表記
用語基準 送り仮名(公用文(解説・広報)を追加)、漢字基準、公用文・公用文(解説・広報)、難しい語の言い換え、旧字体、固有名詞ふりがな付け、商標・商品名、変更された名称、数字の表記、法人等略語
表現洗練 文体の統一、重ね言葉、同一助詞の連続、二重否定、回りくどい表現、修飾関係、並列関係、ビジネス文、命令的表現、くだけた表現(括弧内もチェックする・しない)、たりの脱落、べき止め
字種統一 単位、句読点、カタカナ、数字、記号、アルファベット
長さチェック 文、句読点、ひらがな、カタカナ、漢字
環境依存文字 外字と機種依存文字、JIS X 0213:2004で例示字形が変更された漢字
印刷標準字体 簡易慣用字体・デザイン差などの文字
スペルチェック 先頭のみ大文字の単語、すべて大文字の単語、数字を含む単語、全角を含む単語など
表記ゆれ 外来語のみ/全部、全角半角・大文字小文字の区別を指摘する/しない
括弧 対応、階層
ルールチェック 『第回』→『第回』といった洋・漢数字の区別など、独自の条件設定が行えるルール辞書によるチェック

 2022年8月22日現在、個人向けのJust Right!7 Pro通常版は4万7000円 (税抜き)、バージョンアップ版は2万5200円 (税抜き)。個人で購入するにはやや勇気がいる価格です。

 モチベーションを維持・向上させるため、仕事道具は常に新しくしておきたい心意気は、動機としてアリだと思います。ユーザーというステークホルダーの立場から開発ベンダーにお布施をしておきたいという動機も正しい姿です。Windows 10のサポートは2025年に終了しますので、それまでにJust Right!7 Proにバージョンアップする必要もあります。

 ただ、手持ちの予算に限りがある場合はJust Right!7 Proへバージョンアップさせるより、ひとまず、同時発売されたJust Right!向け『記者ハンドブック第14版 新聞用字用語集』辞書の購入を優先させた方がよいかもしれません。この辞書はバージョン6にもインストールできます。最新の記者ハンドブックがないと仕事にならない、という場合もあるでしょうから。


【脚注】

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